ああ、そうかよとジストは相槌を打って、エナの頭の下から自分の足を引き抜いて、代わりに鞄を挟み、エナの頭をゆっくりとその上へと導いた。
「ただし、まだ起き上がるなよ」
その譲歩にエナが快く頷いたのを確認したジストはおもむろに立ち上がった。
エナの視線の先で、ジストはウィッグを取りドレスを脱ぎ捨てた。
偶然か否か、脱ぎ捨てたドレスがエナの包帯だらけの足に被さる。
その横にパット百パーセントのブラが落ちる。
ジストが着けていたと思うと少し気持ち悪い。
「乙女の前で何脱いでんの!」
「下は履いてるから安心しろ。それとも、期待した?」
「馬鹿」
確かに下にはいつもの細身のパンツと革の靴を履いていた。
「女装、嫌だった?」
何をいきなり、とジストは肩を竦めた。
話としては唐突だろうが彼が今回被(コウム)った迷惑というものをちゃんと認識しておきたかったのだ。
全てはエナ自身の勝手な行動に因(ヨ)るものであるから。
「別に抵抗はないさ。が、お前を口説くのに女装じゃあ格好がつかないだろう?」
口調は違えど、あくまで彼らしい台詞にエナは小さく笑ってしまう。
「……馬鹿」
繰り返し同じ言葉を口にした呆れを含んだエナの声にジストは唇の片端を吊り上げた。
手を肩にあて、うめき声とともに首を回し、ジストはエナの傍から遠ざかる。
「ジスト……?」
何処へ行くのかとジストの行く方に寝返りを打つと、すぐそこに月明かりを受けて静かに光る湖があった。
そこへ向かうジストの足取りが少し、おかしい。
エナはジストの優しさを感じて笑顔になる。
「足、痺れてんでしょ」
笑いながら言うと、ジストは体はそのままに、顔を半分だけ振り返らせた。
「るせぇな」
きまりの悪そうな声にエナはますます笑顔を深くする。
ジストが顔を洗う様をエナは何気なくラファエルを触りながら見ていた。
月の光が彼を照らす。
ああ、この人は夜が似合うな……なんて今更になって気付く。
闇の中にある一筋の光が似合う人。
さめざめとしていて、どこか優しい月の光が似合う人。
闇の中にいても溶け込まない、更なる闇と静かな光を持つ人だ。
「ただし、まだ起き上がるなよ」
その譲歩にエナが快く頷いたのを確認したジストはおもむろに立ち上がった。
エナの視線の先で、ジストはウィッグを取りドレスを脱ぎ捨てた。
偶然か否か、脱ぎ捨てたドレスがエナの包帯だらけの足に被さる。
その横にパット百パーセントのブラが落ちる。
ジストが着けていたと思うと少し気持ち悪い。
「乙女の前で何脱いでんの!」
「下は履いてるから安心しろ。それとも、期待した?」
「馬鹿」
確かに下にはいつもの細身のパンツと革の靴を履いていた。
「女装、嫌だった?」
何をいきなり、とジストは肩を竦めた。
話としては唐突だろうが彼が今回被(コウム)った迷惑というものをちゃんと認識しておきたかったのだ。
全てはエナ自身の勝手な行動に因(ヨ)るものであるから。
「別に抵抗はないさ。が、お前を口説くのに女装じゃあ格好がつかないだろう?」
口調は違えど、あくまで彼らしい台詞にエナは小さく笑ってしまう。
「……馬鹿」
繰り返し同じ言葉を口にした呆れを含んだエナの声にジストは唇の片端を吊り上げた。
手を肩にあて、うめき声とともに首を回し、ジストはエナの傍から遠ざかる。
「ジスト……?」
何処へ行くのかとジストの行く方に寝返りを打つと、すぐそこに月明かりを受けて静かに光る湖があった。
そこへ向かうジストの足取りが少し、おかしい。
エナはジストの優しさを感じて笑顔になる。
「足、痺れてんでしょ」
笑いながら言うと、ジストは体はそのままに、顔を半分だけ振り返らせた。
「るせぇな」
きまりの悪そうな声にエナはますます笑顔を深くする。
ジストが顔を洗う様をエナは何気なくラファエルを触りながら見ていた。
月の光が彼を照らす。
ああ、この人は夜が似合うな……なんて今更になって気付く。
闇の中にある一筋の光が似合う人。
さめざめとしていて、どこか優しい月の光が似合う人。
闇の中にいても溶け込まない、更なる闇と静かな光を持つ人だ。

