「嬢ちゃん! 盗人する気かい!」
守銭奴の店主がその手を掴み、エナの動きを封じた。
「離せっ」
振り払い、袋から金貨を一枚投げつける。
それを申し訳ないだとか、買った葉の十倍近くの値段を出しただとか考える余裕は無く、次の瞬間には店の外に飛び出した。
だが、その数秒が命取り。
人がごった返す町の中で、余り身長が高くないエナが男を見つけることは出来なかった。
「ラフーっ!」
大声で呼んでみるが、人の視線が集まっただけで、応える声は返ってこない。
右か、左か、真っ直ぐか。
どちらに行ったかもわからない。
そしてエナは混乱するまま、ひとまず全速力で彼らが待つ時計台の元へと走ってきたのだ。
「あの男! 昼間にぶつかってモメた奴だった!」
話し終えたエナが叫び、そうして冒頭の癇癪が始まったと、そういうわけである。
「よし、じゃあ探すか!」
エナが落ち着いたところで、ゼルが手をぼきぼきと鳴らした。
「ホシはまだ、絶対その辺に居る。仲間に手ぇ出したこと、後悔させてやる」
「はーいよん、姫サマ。男のケツ追うのは気が進まないケドねー」
言いながら、首をぐるりと回すジストも相当やる気らしい。
「二時間後に此処に集合。公開ボコりタイムよ。何が何でも見つけて」
かつてない怒りを目に湛え、エナは腕を持ち上げた。
そして、人差し指を立てて横に薙ぎ払う。
「あいつは、あたしが殴るから! 勝手な行動は禁止! 以上!」
その言葉に二人は同時に踵を返した。
「了解」
頼もしい背中を見た後、エナも彼らに背を向けて走り出した。
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