「小鳥って、こいつが……?」
どうみても小さくないし、ちゃん付けで呼ぶには可愛らしさが欠如している獰猛な怪鳥を小鳥ちゃんと呼べるとは。
ある意味感服してしまう。
「五、一、三、二、六……ん? ……餌?」
エナは一瞬手を止めた。
餌にするだとか何だとか聞こえた気がする。
ついつい小鳥ちゃん発言に意識を取られたが、実はそちらの方が何倍も重要だった――当たり前だが。
「そこのキャサリンちゃんは人間の生肉が大好きなんだよ。首が三つもあるからか、体は一つしかないのに、よく食べる子でねぇ」
恍惚に浸るような声にエナは口元をひきつらせた。
「キャサリンて顔か!?」
どうやら名前のセンスまで無いらしい。
「仔猫ちゃん位の大きさならなんとか満足してくれると思うんだ。そういうわけだから……」
怪鳥の首の一つに取り付けられた首輪の液晶に数字が点(トモ)る。
「……げっ」
エナは慌てて数字を打ち込む。
「食べられてくれたまえ」
ハセイゼンが言い捨てる。
怪鳥の首輪に三つ目の数字が光る。
と、その時。
「……取れたっ!!」
ラファエルの首から、もはや何の拘束力も失った首輪が重力に引き摺られ、絨毯の上に静かに落ちた。
ラファエルが体をぶるぶると揺らし、その自由を確認する。
そのすぐ後に、怪鳥――キャサリンの首輪も床に落ちる。
エナが燭台を握る。
羽を大きく広げたキャサリンが突っ込んでくるのをエナは片足で横に跳んだ。
物凄い勢いで飛び掛かってきたキャサリンはそのまま高い天井へと舞い上がり、ぎゃあ、と歓喜の声をあげた。
あんな高さから急転直下でもされたら、一撃必死だ。
着地したエナは空いた手で拳をつくり、遂に叫んだ。
「金持ちのくせに、餌代ケチんなぁぁっっ!」
少し論点がずれた絶叫を聞き取る者は居なかった……と思っていたのだが。
意外にも、答えが返る。
「節約と、言ってくれたまえ」
ふと視線を動かすと硝子の向こう側に、にやにやと笑うハセイゼンの姿が。
おおかた、キャサリンの食事風景でも見にきたのだろう。
――最っ低な趣味っ!
ぎり、と奥歯を噛み締めたのも束の間。
キャサリンが嘶(イナナキ)き、異様な程に尖った爪を見せびらかしながらラファエルに襲い掛かった。

