砂漠の賢者 The Best BondS-3

「……そっか!」

 人間、切羽詰まった時には火事場の馬鹿力を発揮するという。
 今のエナはまさにそれだった。
 精神的に追い込まれた脳がほんの一瞬、最大限にまで活性化を果たす。
 頭の中に確信めいた直感が働く。

「ラフ!」

 強引に引き寄せ、エナは数字を入力していく。

 1・1・3・2・6。

――違う。

 2・1・3・2・6。

――これも違う。

 けれど、五桁であることにエナは自信を持っていた。
 何故ならば。
 『ERROR』の文字が五文字であるから。
 最初は『犬―三二六』、つまり、犬の三二六番と解釈したが、それは間違いだった。
 犬、千三百二十六番だったのだ。
 そして、その数字に一桁足すとするならば、それは犬を表す数字。
 一番最初にいずれかの数字を入れればよいということ。
 先程も言ったとおり、これは確信。
 この目が醒めるような感覚の直感が外れたことなど今までかつて無かったのだから。

「ラフ、もうちょいだからね」

 されるがままのラフに声をかけた時、サイレンが止み、同時に音と形容するには曖昧な、耳がキーンとする高い音が紛れ込んだ。

「我が屋敷にようこそ、可愛い仔猫ちゃん」

 何処からともなく声が響く。
 ジストあたりが言いそうだなと思いながら、その言葉の気持ち悪さにエナは背中を丸めて両腕をさすった。

「うっわ、さむ……」

 呟く声は相手に届かなかったらしい。
 と、いうことは何処か拡声器が内臓されているだけなのだろう。

「どうかね、我が家の檻は気に入ってくれたかな?」

 脂ぎった声が下卑(ゲビ)た笑い声をたてた。
 舞を踊っている最中に見たこの屋敷の主を思い出す。
 なるほど外見通りの声だ。
 高くもない身長には不釣り合いな程肥え太り、何でも掴んできたのだろう欲深い手に飴玉のような宝石を着けて、底無し沼のような目をしていた。

「だがね、私は人間が余り好きではないのだよ、仔猫ちゃん」

「だからキモいっつーの。その腹オロして焼いてやろうか、クソ豚野郎」

 ぶつくさと文句を垂れながらエナはラファエルの首輪へと再度挑戦を試みる。

「四、一、三、二、六……これも違うか」

「そこでだね、仔猫ちゃんにはそこの小鳥ちゃんの餌になってもらおうかと思ってね」

 エナは耳を疑った。
 同時にハセイゼンの美的感覚というか、言語選びのセンスも疑う。