砂漠の賢者 The Best BondS-3



「ラフっ!!」

 じゃらじゃらと鎖を鳴らせながら胸を目掛けて飛び込んできたラファエルをエナは両手で受け止めた。
顔に擦りよるラファエルの鼻先に笑顔でキスを一つ。
 それでもただ再会を喜ぶだけのエナではない。
 次の瞬間、エナはラフに渾身のでこぴんを見舞う。

「に゙ゃっ!?」

 突然のエナのこの行動に、ラフはびくりと顔を引いて何が起こったのか訳が分からぬままにぷるぷると首を横に振った。
 そしてきょとんとしたままのラフの目を覗き込んだエナは。

「間抜け!」

 と一言、言い放った。
 まるで海賊団に捕まったゼルに言った時と同じ口調で。

「あんなのに捕まるかフツー!?」

 動物愛護団体が聞けば非難轟々に違いない。
 だが、エナにとってラファエルはペットではなく、仲間の一員だった。
 庇護するだけの生き物ではない。
 賢くて勇気もあるパートナーだと認めた上でのその言葉にラファエルはといえば、本当に申し訳なさそうに耳と尻尾を下げて項垂れた。

「あんなドジ、二度とすんな!」
「んにゃあ」

 傍若無人な物言いにラファエルは一声鳴いて、エナの顎を舐めた。

「よし!」

 満足そうに頷いたエナは、今度こそしっかりとラファエルを抱き締めた。

「……無事でよかった!!」

 だが再会を堪能している場合ではない。
 ラファエルの元には辿り着けたが、さてどうしたものか。
 エナが進む度にご丁寧にも硝子を上げてくれたお陰で来た道は完璧に閉ざされているし、何やらぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる怪鳥が鎖の許す限り近寄り充血した目で首をこちらに伸ばしている。
 硝子を隔てた遠くでは、男逹が犇(ヒシ)めき合い何かを話し、監視の目を向けている。
 硝子の遠隔操作――決められた回数以外に――が出来るのであれば最初に言って欲しい、と彼女は思ったわけだが、それはもう後の祭り。

「……しかも、何、これ」

 嫌そうな顔でラファエルの首に繋がった鎖を持ち上げる。
 獰猛な獣を繋ぐこともあるからなのか、その鎖は結構太い。
 ラファエルを床に下ろすと、首の毛を流れとは逆に撫で上げて、そこにある首輪に溜め息を吐いた。
 そこには小さな小さな液晶画面。
 首輪の横についた突起物を押すと、その液晶に「0(ゼロ)」の数字が点滅しはじめた。
 上向きの矢印で数字を変化させていくらしい。