気ままにただよう一匹のカエルは、お城に仕える洗濯おばさんの右手に持っていた大きな洗濯バサミを見つめていました。
 さあて、コイツは面白い。――カエルは、悪巧みを抱えているような笑みを浮かばせました。
 すると、ピョーンと洗濯おばさんの右手に飛びのって、大きな洗濯バサミを掴み、そのまま盗み取ると、床まで簡単に飛び降りました。
 そうして、バネのように体を飛ばしてゆき、カエルはお城の食卓に六人が座っているのを目にしました。
 そのうち、針のようにツンととんがった大きな鼻をもつ魔女を見つめて、カエルは腹を抱えて笑い出しました。
 だって、この洗濯バサミをあの大きな鼻に挟まったところを想像してしまったのですから。
 カエルは、すぐさま食卓の上に飛び乗りました。
 すると、五人の王族と一人の魔女は騒ぎ立てて始めます。

「いました。奴ですよ、魔女様。このカエルが昨日の晩、わたくしの大事な金色の髪を抜きとって、その髪を毎朝紅茶を飲むためにつかっているティーカップに入れてあったのです。それに気づかずわたくしは、紅茶を飲んで、わたくしが晩に抜き取られた金色の髪が入れられていたというわけです」

「ふむ」

ところが、人間の言葉をカエルは知りませんでした。

カエルは、すぐに魔女の鼻に、洗濯バサミを挟み込みました。

「ひえー!」

魔女の凄まじい叫び声がお城のなかで響きわたりました。