■ ■ ■ それは、俺が中学一年の頃。 蝉の声が聞こえる、ある真夏の日だった。 『新平兄ちゃん!』 俺にはひとりの弟がいた。 名前は、爽平【ソウヘイ】。 3才下の、小学4年生。 『父さんが一緒に釣りに行こうって言ってるよ!早く行こっ』 『わかった、わかった』 爽平は俺を慕ってくれてて、なついていた。 俺も、兄らしくしなきゃな、っていっつも思っていた。 爽平の笑顔は、いつだってキラキラしてて太陽みたいだった。