俺は立ち上がって、雫が走って行った方向を見つめる。 「泣くんじゃねぇよ」 ポツリと、誰にも聞こえないように呟く。 ……きっと俺は、興味があるんだ。あいつに。 最初会った時から。 昨日、初めて見た雫の瞳は、何も映していなかった。 色も、光も、世界も。 寂しそうで切なそうで、今にも消えてしまいそうなほど儚い、小さな背中。 絶望の真っ黒な瞳。 どうしてあんな瞳をするのか、気になるんだ。 「……多分、それだけだ」