「ん~」
美耶子の提案で、ぼくたちはフットボールコートの裏の、校舎を一望できる見晴らしの良い丘の上で補講を開始することにした。授業の始めと終わりに、教室でコーラをラッパ飲みしながらスカイプしている担当の先生に顔を見せれば、時間内は場所をどこに移しても良いらしい。
「ぜんぶできてるけど」
他の授業中に終わらせた、その日のぼくの代数Iの宿題をチェックした美耶子は、小さなあごに人差し指をあてながら、首を左に20度ほどかしげた。
意識的にやっているのかもしれなかったが、とりあえずかわいいしぐさだと思った。
「宿題やってなかっただけだからね」
ぼくは体を伸ばしながら、彼女がずっと心の隅に抱いていたであろう、「どうすれば、あの超簡単な代数IでFを取れるの?」という素朴な疑問に、先回りして答えた。
ぼくの自尊心を傷つける心配をする必要がなくなり、美耶子はほっと安心した様子で、肩をなでおろしながら 笑顔で言った。
「だめだよぉ。日本とはちがうんだから」
「そうみたいね・・」