羽村の笑顔を見ると、聞く気が失せてしまった。
ファイルを羽村にお願いして、凛子はお昼を食べに行くことにした。
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凛子が入社して、3週間が経とうとしていた。
もう間もなく、彼女は専務付きになる。
「それで、新しい秘書はどうだ?」
月に一度、家族が揃う夕食で、環は父に尋ねられた。
実家を離れて、10年近く。
毎月必ず行われる家族の夕食は、お互いの近況報告を兼ねている。
父であり社長でもある宮ヶ瀬 辰馬は、この屋敷の当主だ。
「まだ、何とも」
環は食事の手を止め、慎重に答える。
辰馬の機嫌を損ねてはいけないため、家族の団らんとは程遠い夕食の席。
「俺は見かけた。新しい秘書」
「そうか。どんな子だ?」



