「まだ、ぎこちないな」
「そのうち慣れます」
最初から、完璧になどできない。
このスーツだって、全然しっくりきてないし。
ヒールのある靴を、こんなにも長い時間履いたのは久しぶりだし。
「あの…」
「ん?」
専務派って何ですか?
そう聞こうと思ったが、直前で言葉が止まった。
「いえ、何でもありません」
環は、答えてくれないかもしれない。
興味本意で聞いて良いのかもわからないし、今は言わぬが花、だ。
凛子は誤魔化すように笑うと、そのまま環に背を向けた。
そんな凛子の考えを見透かしたのかは分からないが、環は何も言わなかった――。



