この恋心に嘘をつく


今日1日、初対面の人達の中にずっと居た。
どれだけ良い人達でも、やはり気は張るものだ。


「…俺を見て安心すると言う人は、珍しい」


環の自嘲するような笑みが少し気になったが、今は触れないでおくことにした。


「覚えることが多くて、頭がパンクしそうです」


取引先のファイルを手に取り、パラパラとめくる。

記憶力には、それなりに自信があった。
コンビニでのアルバイトでは、煙草の銘柄を数日で覚えたし、商品の位置も把握した。

けれど、スーツ姿の男性がここまで覚えにくいとは。
ハッキリ言って、全員が同じに見えてしまう時がある。


「まずは、こっちを覚えた方がいい」


環がマニュアルを手にし、凛子のファイルを取り上げる。


「マナーを心得ている女性は、どんな女性にも勝るものだ」

「そういうものですか…」