この恋心に嘘をつく


「あの専務が、社長の誘いをキャンセル? ……ありえない」


明日は雪が降って、雷が鳴って、台風になる。

そのくらい、ありえない事が今、目の前で起きた。

電話の相手がとても気になるけれど、今はこの【事件】を誰かに喋りたい!

我慢できない笑みを浮かべて、秘書室への帰りを急いだ。



*****



出かけるつもりはないから、何も持たないまま、外へ出た。

上着だけ羽織り、アパートの前で待つ環の元へ歩み寄る。


「こんばんは」

「こんばんは。早い返事に、正直驚いてる」


笑う環を見上げ、凛子は苦笑する。

確かに、自分でも早すぎると思った。

話を聞いたのは、昨日だ。

しかも、まだ24時間も経っていない。


「この話を、受けようと思います」

「そうか。良かったよ」