この恋心に嘘をつく


片付けを再開しながら、時計を見る。

本当なら、まだ会社に残っている予定だった。

社長――父親からの食事も断りたいくらいだ。

だが、家族の付き合いを断ると、イメージが悪い。


「では、私は失礼します」

「あぁ、ありがとう――…」


スマホが鳴る。

素っ気ない呼び出し音は、プライベート用のスマホだ。


「――はい。あぁ、早いな、と思って。いや、会って聞くよ。今から迎えに行く」


電話を切り、出ていこうとする秘書を呼び止める。


「食事はキャンセル。伝えておいてください」

「え? あ、はい」


驚く秘書を気にもせず、環は帰り支度を終える。


「明日のスケジュールは、メールで頼みます」


用件を手早く伝え、早足で専務室を出ていく。