この恋心に嘘をつく


スマホに手を伸ばし、凛子は名刺を握り締めた。



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仕事中に、プライベート用のスマホをデスクに出すことはない。

しかも、そのスマホを気にするなんてことも、ありはしなかった。

けれど、しばらくは仕事中も持ち歩くことになるだろう。


「専務。社長からの伝言で、今夜は家族で食事をするそうなので、本家に集まるように、とのことです」

「――わかった」


一瞬、眉間にシワを寄せるが、すぐに無表情に戻す。

環はノートパソコンを閉じ、ファイルを片付け始める。


「それから、専属の事なのですが…」


言いにくそうに、秘書の女性が話し出す。


「その件については、まだ保留で頼みます」

「は、はい」


笑顔を向けると、それ以上言ってこないから楽だ。