この恋心に嘘をつく


「安生」

「はい」


見上げた環の瞳は、真っ直ぐに凛子を見つめている。


「ありがとう。戻ってきてくれて」

「――はい。専務も、話してくれて、ありがとうございます」


凛子が微笑むと、応えるように環も微笑む。

その笑顔は、間違いなく心からの笑顔だ。


環について、知らないことはたくさんある。
たくさんあるけれど、これからは知っていくことができる。

秘書としてのスキルも心構えも未熟だけれど、ここがスタート地点だ。

専務――宮ヶ瀬 環の秘書としての、スタート地点。

今日はじめて、そこに立てたような気がした。