この恋心に嘘をつく


「……綺麗」


ポツリと呟いた言葉は、環の耳に届いたのだろうか?
環が、応えるように口を開く。


「母と、よく来たんだ。水族館には」

「…そうですか」


母――郁子の顔が、脳裏によみがえる。
一緒に水族館に行くような仲には見えなかったが。

凛子の疑問に気づいたのか、環は話続ける。


「あの人は、俺の母親じゃない」

「……どういう意味ですか?」

「そのままの意味だ」


環を見れば、彼は変わらず水槽を見つめている。
口元には、穏やかな笑み。


「愛人の子なんだ」

「あ、愛人…ですか」


すんなりとは、受け入れられない単語だ。

そんなの、昼ドラぐらいでしか聞かないから。