以前の、観月の言葉が脳裏に浮かぶ。
【彼女は――安生はきちんと、専務を見ていましたよ】
確かに、その通りだと思う。
自分さえも気づいていなかった事を、凛子は知っていた。
「……俺は、何も知らないんだな」
――専務は、彼女をちゃんと見ていましたか?
観月の言葉は、正しかった。
見ていなかったんじゃない。
見ようとしていなかったんだ。
「最低だ…」
離れていっても、仕方がない。
自業自得だ。
「……」
引き出しを開ければ、持ち主を待ち続ける腕時計が目に入る。
打算的に動いた結果が、この現状。
凛子は悪くない。
彼女は、歩み寄ろうとしていたのだ。



