この恋心に嘘をつく


「とても、真摯だと思います」


本当に、それしか生き甲斐がないんじゃないか、って言うくらいに。


「そう…。今、大きな仕事は抱えているのかしら? 貴志さん達とも上手くやれているか心配だわ」

「話されないんですか?」

「――えぇ。環さんは、自分から前に出る性格ではないから、あまり話したがらないの。何でもいいのよ、教えてちょうだい」

「すみません。仕事のことは、お話しできないんです」


例え母親であっても、簡単に口を開くようでは秘書として失格だ。

失礼だとは思ったが、守るべきことは守らないと。


「良いのよ。私の方こそ、ごめんなさいね。――そうだわ、私の連絡先を教えておくわね」


渡されたのは、藤色の綺麗な名刺だ。

ビジネスで受け取る名刺よりも、遥かに目を引くデザインをしている。


「着付け教室をしているの。家にいるだけじゃ、時間を持て余してしまっていて。良かったら、いつでも来てちょうだい」

「ありがとうございます」


名刺を仕舞いながら、ふと腕時計を見る。