この恋心に嘘をつく


こんなところ見られたら、昨日の二の舞――いや、もっと酷い事態に陥りそうだ。

早く帰らなくては。


「下の名前を聞いても?」

「…凛子です。凛々しい子と書いて、凛子です」

「良い名前ね。最近の名前は、あまり好きではないのよ」


紅茶を口にしながら、郁子が微笑む。

一体、何の用があるのだろう?
そもそも、いち秘書を記憶に留める必要があるのだろうか?


「会社には、滅多に行かないのよ。だから、貴女に会えたのは幸運だったわ」

「そうですか…」


何とも言えない空気だ。

カフェオレは飲めるが、ロールケーキを食べる余裕はない。


「環さんは、どうかしら? あまり仕事の話はしないから、気になって。過保護よね? もう、いい大人なのに」


厳しそうな人だと思ったら、子ども思いの母親だった。