この恋心に嘘をつく


「貴女が安生――環さんの秘書ですね?」

「もしかして…」

「社長夫人ですよ」


女子社員が、耳打ちしてくれた。

やっぱり、そうだ。
環の母親――宮ヶ瀬 郁子。


「少し、時間はあるかしら? お茶に行きましょう」

「え、でも…」

「これを頼むわ」


凛子に渡された封筒は、再び女子社員の手に戻る。

郁子はさっさと歩き出し、凛子は慌てて後を追いかけた。




カフェオレとロールケーキが、目の前に運ばれてきた。

会社近くのカフェで、半ば強引に誘われた午後のお茶。
なれども、全く落ち着かない。

向かい合う社長夫人・郁子は、品があるのと同時に威圧感もある。


(…昨日、専務に言われたばかりなのに)