【短編】愛トキドキ憎しみ

好きになると人って冷静じゃいられない。


信じたいのに信じられないジレンマ。


私と慎司の歯車は、いつの間にか噛み合っていなかったんだね……。


すれ違いが起こした行動――。


お互いに好きな気持ちは変わらないのに。


チラリと横を見ると、大好きな慎司の横顔。


大好きだった……。


ずっと一緒にいたいって思っていた。


本当に本当に、愛していた……。



「話してくれてありがと。誤解させちゃってごめんね」


「俺こそごめん。謝ったって許されることじゃないけど……」



弱々しい声になる慎司に笑顔を向ける。


未だ話していないことを心に留めておきながら……。



「これだけは覚えてて? 私は慎司のこと本当に大好きだったから」



ねぇ、慎司。


あなたのこと憎いって思ったりもしたけど。


今は、愛しい気持ちでいっぱいだよ。


触れて抱きしめたいって思う。



「もう一度、やり直せないか」



胸がトクンッと音をたてる。


嬉しいはずの言葉。


……だけど、手遅れ。



「もう、無理……」


「だよな……」



次は私の番。



「だって、私も浮気したから」




その後――。


波の音だけが静かに耳に響いていた。


一体どれくらいの沈黙が続いたのだろう。


変わらず光り輝く三日月が、私たちを明るく照らしていた。