【短編】愛トキドキ憎しみ

……で、やっちゃったの?


少し前までの私だったら、その言葉に激しく憤りを感じていたに違いない。


だけど……。


私も浮気をして、何となく慎司の気持ちが分かるような気がした。


裏切られたことへの憎しみ。


それって、好きという気持ちが大きければ大きいほど強くなるんじゃないかって。


好きだからこそ、些細なことが気になって不安になって。


偶然に偶然が重なったってだけ。


相手を本当に信じることができれば、こんな結末にはならなかったんだよね……。


恋は理屈じゃないって慎司が教えてくれたんだよ。



こんなに苦しくなるのも、

こんなに切なくなるのも、

こんなに憎いって思うのも、

こんなに愛しいって思うのも……


慎司のことが本当に好きだから。


だから……。


私も……


浮気したんだ。



しかも、それだけで終わらなかった。



……慎司、ごめん。



あれっ?


だけど、何で千理と?


それに昨日用があるって言ってなかった?


吹き込まれたって?



私は夜空を見上げている慎司の顔を覗き込んだ。


聞きたいけど聞きたくなかったこと。



「だからって何で千理と?」



慎司の体はピクリと動き、さっきまでとは対照的に黙り込んだ。



「ここまで話したんだから、ちゃんと最後まで聞かせて」



このウヤムヤな状態のままじゃ終われない。


話すことに戸惑いを隠しきれていない様子の慎司は、俯いて大きなため息を漏らした。



「……玲花には知られたくなかったんだけど」



そう言うと、慎司は私が思いもしなかった衝撃の話を聞かせてくれた。