【短編】愛トキドキ憎しみ

「……何で……ここが?」



やっと絞りだした言葉。


言いたいことは山ほどあるはずなのに。



「知らなかった? 玲花ってつらいことがあると、よく海に来てんだよ……」


「えっ……」



言われてみれば、そうかもしれない。


自分じゃまったく自覚してなかったけど。


私が気付いていないとこまで見てくれていたの?


私……思っている以上に慎司に愛されていたの?


じゃあ……


何で浮気したの?


苦しいよ、痛いよ……慎司。



「この海みんなでよく遊びに来るよな。玲花とも二人で遊びに来たし。電話繋がらないし、家にも帰ってないし……ここに懸けてみたんだ」



いつも以上に喋る一生懸命な慎司に、胸の痛みは激しさを増していく。



「智輝に……」



その言葉に、ビクンと体が反応した。


もしかして、慎司……知っているの?



「何で信じてやれなかったのかって言われた……」



えっ……?


信じる?



「お前を信じられなくて、取り返しのつかないことをした」


「えっ? 信じられなかったって何のこと?」



言っていることが理解できなくて聞き返すと、きつく抱き締めていた手を緩めて、ひどく苦しそうな笑顔を向けてきた。



「少しだけ話聞いてくれる?」


「うん……」



そして、二人で砂の上に座り込んだ。