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バカ……

バカ……


バーカ……。



夜空に光り輝く三日月は昨日より少し欠けていて、私の心を表しているかのようだった。



『やられたからやりかえす』



その浅はかな思考に、どれだけ自分の愚かさを感じてしまったのだろう。


慎司の温もりしか知らなかった昨日までの私は、もうどこにもいない。


とても大切だった友達の智輝に抱かれて、温もりを感じてしまった。



知らなかった……。



智輝が私を好きだったなんて。



「最低だよね……」



私の行為がどれほど彼を傷つけてしまったんだろう。



……智輝に聞かれて答えたんだ。


慎司のこと「好き」って。


私のことが好きって言った智輝の腕の中で……。


そんな私に、ちゃんと話しておいでって背中を押してくれた。


少し切なげな表情になった気がしたものの、すぐに優しく笑いかけてくれて。


……智輝言ってたよね。


本気のやつとしかって、だから、勝手に自惚れている。


私に本気って……。


智輝の指から伝わる温もりと優しいキスを思い返して、確信した。



やっぱり頼りになるよ……智輝。


私にはそんな愛し方できない。


どんな想いで私を抱いたかと考えると、胸がギュッと締めつめられた。


苦しくて、切なくて。


自然と頬を伝う涙。


愛しい……。



私は込み上げてくる想いを飲み込み、何も言わずただそっと唇を重ねた。


智輝も何も言わずに受けいれてくれた。



……好き。



何でだろう。友達って思っていたのに。


慎司以外の人にこんな想いを抱くとは思ってもいなかった。


これ以上ここにいたらいけない。


そう思った私は、急いで服を着て智輝の家を飛び出していたんだ。