「うん、する」


「……ったく、玲花は言い出したら聞かないんだから」



なぜか智輝はドアノブにかけた私の手を握って、ドアを開けさせてくれない。



「……どうしたの?」



不思議に思って振り返って智輝の顔を覗きこむ。


いつになく真剣な眼差しで智輝に見つめられている気がした……。



「誰とする気?」


「……同中の誘えば誰とでも寝てくれる男が……キャッ!」



えっ?


どうして……?


智輝?



何で……

私を抱き締めているの?



「それなら俺にしとけよ」


「へっ?」


「だから、誰でもいいなら俺に抱かれて」



苦しいくらい強く後ろから抱き締められている私の体は、予想外の展開に硬直していた。


言われたことをすぐには理解できないでいると、体を正面に向き返られ、半ば強引に唇を奪われた――。



「……ッン……」



いつもの穏やかな智輝からは想像もできない激しいキス。


今にも足の力が抜けそう。


甘く激しいキスに酔いしれるかのように、何度も何度も唇を重ねる。



……キス……しちゃった。


体は智輝のキスに敏感に反応して熱くなる。


それでも、心は冷静だった――。


慎司も……千理とキスしている時、私のこと思い出してくれたかな?


智輝とキスしながら、慎司のキスと比べている。


重なる唇を、口の中を侵す舌を、抱き寄せられた身体を……。



「本当に後悔しない? やめるなら今だよ」



そんなこと分からない。

だけど、今更後には引けない。


私は智輝の首の後ろで両手を絡ませ、さらに激しく舌を絡ませた。



「分からない……だけど、やめないで」



「……知らないからな」



智輝はそう言うと、私の肩からバックをおろしてベッドに押し倒した。