「どんな理由があるにせよ浮気は浮気。まだ許せる自信ないし、やっぱムカつくんだもん」



慎司の指が千理の身体に触れて、唇が何度も重なり合う。

身体を撫でるように舌を這わせ、身体を重ねて熱を帯びる。

そして囁くんだ……。

私じゃない女に……。


想像するだけで身が引きちぎられるように苦しい。



あーーーーーっ!!


やっぱムカつく……あっ。


その時、不意に思い出した。


二人で会話した時のことを。



『浮気したらやりかえすよ?』



……そうだ。


私も浮気しかえしたら、慎司も同じような思いするんじゃない?


やられっぱなしってのもムカつくし。


……。



「決めた!」



突然大きな声を出した私に少しビックリした智輝は、次の言葉でさらに驚きを隠せないくらい目を見開いた。



「私も浮気する」



少しの沈黙――。


そして智輝は、低い口調で話しかけてきた。



「……やめとけよ。玲花が後悔するよ」


「後悔したっていい。悔しいの、それに許せない。だから……復讐」



静止の声さえ振り払うほど、私は固く決意した。


浮気してやる……。


同じ思いすればいいのよ。



「智輝、今日はありがと! そろそろ帰るね!」



窓から見える太陽が西の空に沈みかけている。


ずいぶん長い間、智輝の家にいたみたい。


これ以上迷惑かけないようにと、私はバックを肩にかけてドアノブに手をかけた。



「なぁ……本気で浮気する気?」