「玲花、目覚めた?」



うっすら目を開けると聞き慣れた声が耳に入り、その方向へと顔を向けた。



「あれっ、智輝……って、えっ……と?」



キョロキョロと辺りを見渡す。


ここ、どこ?


ふかふかのベッドの上でタオルケットに身を包んでいる私。


誰かの部屋……っぽい。


で、目の前にいるのは智輝で。



あっ。


あーーーっ!!


お……思い出した。


ってことは、ここ智輝の部屋?



「智輝、私……」



椅子に座ってノートパソコンを扱っていた智輝は、パタンと閉じると椅子を回転させた。



「大丈夫?」


「う……ん、もう平気。あんな場所にずっといたら日射病にでもなっちゃうよね。私、本当にバカだからさ……アハハッ……」



目覚めてすべてを思い出した私は、必死に笑って無駄に喋っていた。


慎司と千理に裏切られたこと。


二人に抱いた憎しみという感情。


そして、智輝にまで迷惑かけちゃったこと。



すべてのことから目をそらしたくて。


少しでも気を許してしまえば泣いてしまいそうで。


これ以上智輝に迷惑をかけたくなくて。



――必死だった。



なのに智輝ときたら、私が必死に繋ぎ止めていた細い糸のような脆い思いを、いとも簡単に切ってしまったんだ。



「泣くの我慢するなよ。……肩貸すから」