「あれっ、慎司から?」



家に着いてバックの中の携帯を取り出すと、ディスプレイに慎司からの着信の文字があった。


携帯が差している時間は18時12分。


慎司からの着信はその30分ほど前の17時35分。



……智輝と帰っていた頃かな?


どうしたんだろ。


用があるって言っていたのに電話してくるなんて、何かあったのかな?


私は慎司の携帯に電話をかけてみた。




プルルルルルル……プルルルルルル……プルルルルルル……




耳に鳴り響く呼び出し音。




プルルルルルル……プルルルルルル……プルルルルルル……ッ

留守番電話サービスに接続します……




鳴らし続けた携帯は無常にも留守番電話になってしまい、私は伝言を入れずに電話を切った。


携帯電話を机の上に置き、着替えもせずにベッドの上にダイブした。


見慣れた天井を眺め、深いため息をつく。



「どうしたのかな……」



こんな些細なことが気になって仕方がない。


電話に出なかっただけ。


――だけど。


……好きだから。


……好きすぎるから。


不安になっちゃうんだよね。



だめじゃん、私。


ハァァァァ……。




その後――。


慎司から連絡が来ることはなかった。


小さな不安からなのか、ご飯も少ししか喉を通らず、足早に部屋へと戻った。


そしてなかなか眠れない夜を過ごす。


窓から覗き込む三日月は、どす黒い雲がかかって鈍く不気味に光っていた。