「何の話ー?」



不意に後ろからギュッと抱き締められ、私は箸でつかんでいた卵焼きを思わず落とす。


芝生の上をコロコロと転がる卵焼き。


以前の私なら「大事な卵焼きがー!」って怒っていたはずなのに、その手の温もりにそんなこともすっかり忘れてしまう。


恋って本当に不思議……。



「おかえり、慎司」



こうして抱き締められると、昨日の情事を思い出して体が疼きだす。


ったく、人の気も知らないで。



「おい慎司、いちゃつくのは二人の時にしろよな」


「いいじゃん、俺の女だし!」



俺の……女……。


抱き締める力がさらに強くなり、それだけでさっきの不安は薄れていく。



「仲がいいことで。お邪魔みたいなんで退散するか。行くぞ千理!」


「……えっ、ちょっ……待ってよー智輝ー!」



早々と立ち去る智輝と、焦って追い掛ける千理の後ろ姿がどんどん遠ざかっていく。


二人が視界から消える前に、慎司は隣に座ってキスをしてきた。


晴れた夏の青空に白い雲。

生い茂る緑の芝生に体の間を擦り抜ける爽やかな風。

木々の間から差し込む光が眩しく照らす。


そんな中、深く激しいキスを何度も交わす。


……ん?



「ちょっと、ここ学校!」


「やめる?」



制服の中に手を忍ばせ、少し意地悪く囁く慎司。


私が拒めないって知っているくせに。



「……やめ……な」

キーンコーンカーンコーン……。



「チッ、残念」



舌打ちをして、制服の中からすばやく手を出した慎司は立ち上がった。


た……助かった。

流されるとこだった。


乱れた制服を戻し、差し出された手を取り立ち上がる。


そして、そのまま手をつないで教室へと戻っていった。


だけど……

体の火照りがとれなぁぁぁい!

……バカ。