「え····?この万年筆·········。」

手渡された万年筆は、男にはとても買えないような高さの万年筆だった。


「人生最後の絵は、とびっきりのいい絵を描いて欲しいですから。」



「······これでも、絵は得意な方だったんだ。」

そう言いながら男はスケッチブックに絵を描いていく。


線から円へ、円から直線へ、
万年筆の少し青っぽいインクが、スケッチブックに筆跡を残していく。


「·········出来た。」


男は殺人鬼にスケッチブックと万年筆を差し出してきた。


「ありがとうございます。···凄いですね、ここまでとは思ってませんでしたよ。」


「まぁね···。」


殺人鬼は、男の目が赤くなっているのを見た。


「·······この涙で滲んだインクが、いい味を出してますね。」


「········ありがとう。」