「良かった。」

殺人鬼はそう言うと、ショルダーバッグから取り出した紐で男を縛った。
とても強い力だ。


「職業はなんなのですか?」

急に縛られて、抵抗も出来なくなった男は、素直に質問に答えることにした。


「······無職です。」


「無職?····って事は、ニートですか。」


殺人鬼は驚かない。
予想はしていた事だった。

平日、それも真っ昼間に家にいるのだ。
ニートであっても不思議じゃないはず。

······たまたま休みだったのなら申し訳ないのだが。


「死ぬ前に何かやりたいことってあるんですか?」


「死·····死ぬっ!?」


「はい。だって、僕、殺人鬼ですから。承知の上で喋ってくれているのかと。
殺されると分かってて暴れない人、そこまでいないんで。」


殺人鬼に包丁で脅されて、普通なら暴れたり泣き喚いたりするはずである。


「·····俺なんて生きてる意味も、無いし·····。」

男が、ボソッと、何かを呟いた。

男の涙が枯れてしまったようだ。
自分に呆れ果てているのだろうか。