「ご飯持ってきたけど食べる…?」

澪はわざわざご飯を持ってきてくれている。

美味しいカツ丼の臭いがする。

澪の料理は見栄えも良く、味も確かである。



「ノックぐらいしろよな。」

冷たく言い放つが、すぐに澪が持ってきたカツ丼にがっつく嵐。

そしてカツ丼をあっという間に完食した。

「食べるの早っ!早すぎて体に悪そうっ。」


「心配すんな。早食いは俺の特技よ。とりあえず早く出ていってくれ。重要な考え事があるんだ。」


澪の事が面倒に感じた嵐は素っ気なく言う。


しかし、そんな嵐を見ていると心が痛む。

澪は少しでも嵐に頼ってもらいたいのだ。


不満や辛さ、ストレス、それら全てを一人で抱えて我慢しながら戦う嵐を見ていられない。


しかし、そんな事をまだ嵐に言えない。そんな事を言って嵐にウザいと思われたら嫌なのだ。


澪は嵐には借金を払ってもらい、他国に売り飛ばされるのを助けてもらったのだ。

だから澪は嵐に恩を返そうと思っている。


しかし、嵐は澪にまだ心を完全に開いていない。

それは澪も嵐の態度を見ていれば分かるのだろう。



だが、いつか近い未来。『その時』が来たら恩を返したい。

澪のささやかな願いである。





澪が部屋から出ていった後だった。嵐は澪の顔を見て少し、気がラクになったのか寝ることにした。


(澪の顔をみると落ち着く…。打つ台は明日考えよ。今日は疲れた…)


嵐はそのまま深い眠りにつく。