嵐の家に着くと女はキョロキョロした素振りをして落ち着きがなく、とても鬱陶しい。


「何キョロってんだよ。俺の部屋が意外と綺麗なのに驚いてんのか?」


「いえ、別にそこは何とも思ってませんけど…。ただ男の人の家に上がるのは初めてなので…。」

嵐はこの時、女には男に対する免疫が無いと悟った。


俺もだ。俺も女に免疫なんて無いし、会話するだけでも内心嬉しいのだ。




女は座布団に座り、嵐はお菓子とお茶を出した。



「それで、何でお前は借金したわけ?」


女は少し言いにくそうにいう。

「実はあたしの家は元々この国で昔から経営していた大手の旅館運営会社をしていたのですが、2年前に父が亡くなってからあたしが社長になったのですが知識とかも無くて急に業績悪化して、大赤字になったんです。そして銀行に借金して頑張って会社を立ち直らせようとしたのですが結局失敗しちゃいまして…。」



なるほどな。父の急死で会社が傾いたのか。

他の社員も社長の死で動揺したのか。

ボンクラ揃いの会社だな。

どうみても親父さん一人のワンマン会社じゃねーか。

こりゃ潰れるわな。


昔から経営していた大企業も部下がボンクラばかりだとコケる時は大きいわな。



「そんで家や土地を差し押さえられたのか。じゃああんた今、金無いのか?」

「はい。あるのは昔から私服として使っていた浴衣や着物だけなんです。」


ああ、大企業だから親に普段から社員達に綺麗なところを見せるように浴衣や着物を着せられていたんだな。


通りで着慣れている感じがしたわけだ。



しかし、状況は分かった。


俺が男として今出来ることはこれしかないな。

「じゃあお前、俺の家に住むか?マンションの一室の割りには部屋が広いし、まだ部屋があるから俺は構わないぞ。」



「本当ですか?じゃあ…しばらくあたしここで居候させてもらいますねっ!」


おいおい。男に対する免疫無いくせに即答か。


よほど困っていた事が分かるな。