なのに、母さんはあっさり、この学校への進学を勧めて来た。

俺に後悔させたくない。

ここで諦めさせたら、死んだ親父に顔を向けられないっていう理由で。


何度、確認しても、お金のことなら心配ないの一点張りで、母さんは聞かなかった。

最初はおかしいなと思ったけど、あまりの抵抗に、そこまで言うなら、家族みんなの夢は叶えるべきなんじゃないかって、俺もだんだん考えるようになって行った。

その時はまだ、これで夢が叶うのだとしたら、それが親父と母さんと俺、家族三人の幸せなんだって、真剣に信じてたから。


だけど、高校入学寸前、その幸せは壊れた。

母さんが再婚したいと言い出したのだ。


お金の心配が無いと言ったのはそういうことか。

いつから、そんな男がいたんだ?


母さんが新たな幸せを見つけることが、悪いとは思わない。

でも、だとしたら、親父の思い出を抱いて母さんと三人で掴もうとしていた幸せは、どこに行ってしまうんだろう.......


認めてやりたい気持ちと許せない気持ちが戦って、どうしたらいいのかわからなくなった。

相手が小学校の時、所属していたサッカー少年団の監督だと聞いて、その気持ちにますます拍車がかかった。


俺にはサッカーしかないはずなのに、信じて来たサッカーにまで嫌悪感が湧いた。

サッカーは親父との唯一の接点で、いなくなってしまった今も、一緒に見られる夢だと思ってたのに.......


でも、サッカーに罪は無いし、結局、それしか発散する方法も知らないから、高校入学後はアホみたいに部活に打ち込んだ。

皮肉なことに、それが功を奏して、秋頃には、一年生ながら、ちょくちょく試合に出してもらえるまでになった。