「ねぇ、ほんとにこの部屋、女の子入れたことないの?」

「うん、なんで?」

「あ、だって、何か意外、って言うか。」

「そうかな?」

「うん。」

「俺って、そういうイメージ?」

「えっ? いや.......ごめん。そうかも。」

「うっそ? マジ?」


冷蔵庫の扉をパタンと閉めると、彼は明らかに私の発言を面白がってるのがわかるような笑顔で近付いて来た。

両手には、良く冷えていそうな缶ビールが握られている。


「とりあえず、座んなよ。まだ飲めんだろ? もう一杯だけ、付き合わない?」

「あ、うん。」


お世辞にも広いとは言えない部屋で、ベットをソファ代わりにして、二人で並んで座って、手渡された缶ビールで、本日二回目の乾杯をした。

この空間で、この距離感で、このシチュエーション。

あっという間にドキドキがマックスに達して、お酒の味なんて、まったくわからなくなる。


「ねぇ、あかねちゃんから見た俺って、どういうイメージなの?」

「へっ?」

「この前、駅でとんでもないところ見せちゃったし、もしかしたら誤解されてるのかなと思って。」

「あぁ、うん。あれは正直、ちょっとビックリしちゃった。」

「だよなぁ。でも、言っとくけど、あれは本当に特別だからね。」

「どういう風に?」

「あの子はああやって、ストーカーまがいなことするから、できるだけ接触しないようにしてたんだ。そしたらさ、自殺予告して来たり、妊娠してるって周りに嘘ついたり、ディープな嘘ばっかり並べて、追いつめて来るから、とにかく無視するようにしてた。」

「そう、だったんだ.......。」