気にし過ぎちゃ、ダメ。

笑ってれば、きっと大丈夫。

とにかく普通に接しなくちゃ、彼に怪しまれる。


自分にそう言い聞かせながら過ごす一日は、とても長かった。

気を抜くと暗い表情になっちゃう気がして、意識的に笑ってるから、疲労感もハンパじゃない。


今日は「中番」で、明日は「遅番」。

明日の帰りは、彼の奢りで飲みに行くことが決まっている。


嬉しいはずなのに、気が重い。

弱い方ではないと思うけど、お酒が入るなら尚更だ。

変なタイミングで泣いてしまわないか、心配でたまらない。


私の気持ちなんて、何一つとして、彼は知らない。

出会ってからまだ一ヶ月も経たないのに、彼の知らないところで、こんなに泣いたり、笑ったりしていることも。


ましてや、自分の秘密が私にバレているなんて、これっぽっちも気付いていないだろう。

一人で悩むしかない私は、こんなに苦しんでいるのに。


何か、ちょっと悔しい。

どうにもならないってわかってるから、余計に。

でも、恋って、やっぱり好きになった方が負けなのかな.......


そんなことを考えながら、帰ってポストを開くと、綺麗な装飾の施された少し厚めの封筒が入っていた。

何だろう? 珍しい。

結婚式か何かの招待状かな?

だけど、何の疑問も持たずに、ひっくり返して差出人を見たら、息が止まった。


連名で書かれている差出人の苗字には見覚えがある。

元カレと、それを奪ったお局の名前だ。

瞬時に、思い出したくもない忌々しい思い出が蘇って来る。