そんな妄想をしながら、上機嫌で階段を上って行くと、今日は珍しく見学ママさんが一人しかいない。

初めて見る人.......なのかな?

色が白くて、どこか儚げで、華奢な感じのする、すごく綺麗な人だ。


どの子のママなんだろう?

ベンチの後ろに立って眺めていると、駄々をこねて、彼にお猿さんみたいにしがみついてコートサイドまで運ばれて来た子が、そのママの顔を見るなり、パっと明るい笑顔を見せた。


まだ5歳くらいの子のクラスだもんね。

大変そう。

ちっちゃい子に囲まれて、彼も頑張ってるんだなぁ.......


「お疲れ様」くらいは声をかけたくて、チビッ子たちの帰り支度を手伝いながら、彼とそのママが話し終わるのを待っていたけど、何故だか二人はとても楽しそうで、一向に会話は終わりそうにない。


残念だけど、ボケっとしてたら、バスを待たせてしまう。

バスが遅れると、この後の時間帯のスクール全般に影響が出る。

だから、如何なる場合もバスの遅延は「悪」だと、加納さんには、日頃厳しく言われている。


とりあえず、子供たちを連れてバス停に向かい、無事に全員乗せた。

だけど、これでOKと胸を撫で下ろしたところで、突然、大声を上げた子がいた。


「あぁ~、僕、水筒忘れちゃったぁ。」

「えっ、うそ? 何色のやつ?」

「水色の妖怪ウォッチのやつ。」

「わかった。じゃあ、今、取ってくるから、待ってて。」

「うん、ありがとう。」


うっわ、やっちゃった。

急がないと、みんなに迷惑がかかる。

でも、妖怪ウォッチの水筒なんてあったかな?

ちゃんと点検したつもりだったのに.......