しかし、胸を撫で下ろす間もなく、今度は駅で待っていた乗客が乗り込んで来た。

再び、すごい圧力で窓ガラスに押し付けられ、身体が固定される。

それでも、さっきよりは数段マシ。

知らないおじさんと何区間もお見合いすることを考えたら、こんなの全然、我慢できる。


でも、できれば、早く降りたい。

乗り換えの駅まで、あと何駅だったかな.......


薄くなった空気と車内の熱気に負けて、頭がボ~っとして来る。

そのまま意識が遠のいて行かないよう、目をつぶって、大きく息を吐いたら、突然、ガタっと車両が揺れた。


ハッとして、ドアに寄りかかっていた身体を起こす。

ちゃんと自分の足で立たなくちゃと思い、ドアに向かって真っすぐに手を突き、足を踏ん張って、しっかりとポジションを取り直した。


すると、腰の辺りに、変な感触がする。

さっきまでは、感じなかった感触だ。

周りの人に触れないようにしようと思えば、触れずに済むくらいの空間はあるはずなのに、何だか生温かくて硬いものが、ピッタリと当てられている。


これ、何? なんか、気持ち悪い.......

鞄とか、手の甲とか、そんな感じの感触だとは思えない。


気味が悪いけど、振り向く勇気が出せない。

扉の隅に陣取ってしまったせいで、逃げることもできなければ、怖くてガラスに映る姿を確認することもできない。

だけど、肩越しに後ろ側から聞こえる息遣いが、どんどん荒くなって行くのだけはわかる。