今しかない、この瞬間を

本当にそう思ったから、その時はそう答えた。

そして、駅の改札を出るまでは、どこかのお店で、彼と楽しそうに乾杯している自分を想像していた。


だけど、改札を出て、少し歩いたところで、突然、彼の足がピタッと止まった。

不思議に思って、振り返れば、彼の顔からトレードマークみたいな二チャっとした笑顔が消えている。


.......どうしたのかな?

思った時には、もう彼の表情は険しくなり始めていた。

驚いて、彼の視線の先を辿ってみると、フワっとしたウエービーヘアーの女の子が、柱の陰から、真っすぐこっちを見つめていた。



「何しに来たんだよ。」

「光汰くんに、会いに。」

「なんで、この駅、知ってんの?」

「光汰くん、なかなか会ってくれないから、あちこちに聞いて、教えてもらったの。駅で待ってれば、きっと会えると思って。」

「.......そう。」

「迷惑だった?」

「うん、迷惑。」

「どうして? 私とは、もう会いたくない?」

「こういうことするなら、もう会いたくない。」

「.......ごめん。」


なっ、何!? ちょっとぉ~!!

この娘、誰? 元カノか、何か?

あれ? いや、違う?

元カノだったら、家の場所くらいは知ってるでしょ?


って言うか、私、ここにいていいの?

いくら何でも、職場の人間に、こんな修羅場、見られたくないよね.......


「その子、誰? 新しい彼女?」

「お前には関係ないだろ。」

「言えないの?」

「.......違うよ。」

「そう、なら良かった。」

「.......。」