今しかない、この瞬間を

一応は気にしてくれてたんだ。

どうやら私が傷付いたってことは、わかってくれたらしい。

だけど、それだけなんでしょ?

彼はまだ大きな誤解をしたままに違いない。


そう思うと妙に恥ずかしくなって、彼の顔を見ていられない。

思わず俯く私に、彼が更に心臓が止まっちゃいそうなセリフを投げかける。


「なぁ、お前の好きな人ってさ、ほんとに田澤さんじゃないの?」

「はぁ?」

「あっ、いや、無理に言わなくてもいいんだけど.......。」

「.......うん、そうだよ。田澤さんじゃない。」


消えちゃいそうなモゴモゴした声で、何とか肝心なことだけは口にした。

でも、待って!?

このタイミングでそう来ちゃう!?

嘘でしょ? もう!!

私はなんて答えるべきなの?


「じゃあ、誰?」

「そ、そんなの言えない!!」

「だよな。」

「そうだよ。」

「ゴメン、変なこと聞いて。」

「ううん、変なことじゃないよ。だけど、それは、もうちょっと待ってくれないかな.......。」


強張っていた彼の表情が柔らかくなり、フッと力が抜けたのがわかった。

それを見ていて、少しだけ、私の緊張も解れた。


だって、無理。

今すぐになんて言える訳がない。

急に言葉が思い浮かばないし、第一、田澤さんにだって、まだきちんと返事をしていない。

こんな準備不足の状態なのに、勢い余って告白したら、後悔するに決まってる。


だけど、これはチャンスかもしれない。

今なら周りに誰もいないし、彼の関心が確実に私に向いている。

普通に話しているだけなら、こんな話題になかなかならないし.......