今しかない、この瞬間を

「だから、代わりに自分が日本代表になるとか言って、すっげー頑張ってんの。ちっこくても機動力で勝負すればいいんだって、俺を見てたらわかったとか、嬉しいこと言ってくれちゃってさ。」

「ふ~ん。」

「で、ホントにU12の県代表に選ばれちゃったりしてるんだから、俺なんかより、よっぽど才能あるのかもな。」

「すご~い。」

「だろ? こうやって、たまに近況報告してくれんの。子供だから、メールとかじゃなくて、ちゃんと手紙で。何か、カワイくない?」

「うん。すごくイイ話だね。」

「助けてやれて良かったって、今でも思ってる。やっぱり、大切にしてる人には、元気に笑っててほしいじゃん? 命の恩人とか大袈裟なこと言われると参っちゃうけど、とにかくこいつが無事に生きてて、好きなサッカー続けていけるんなら、それで十分だよ。」

「うん。」

「おかげでプロを辞める勇気も持てたし、お前じゃないけど、毎日が楽しいから、今の方が断然大事だし。」

「.......うん。」


彼らしいエピソードに、心が温まる気がした。

実際、それで人生が変わっちゃたし、下手をすれば自分が死んでたかもしれないのに、そんなに強くいられるのは、きっと彼が本当に優しいからなんだろう。

二人でいる時だけに見せるあの柔らかな表情は、やっぱり本物だったんだな.......


少しの間、感動話にしみじみと浸っていたら、視線を感じた。

ゆっくり顔を上げてみたら、彼は私をジっと見つめていた。

その視線はどこか寂しげで、真剣そのもの。

吸い込まれそうな瞳としっかりと目が合い、思わず息を飲んだ。


「.......あのさ、この前はゴメン。」

「うん。」

「悪気はなかったんだ。」

「うん、わかってる。」