今しかない、この瞬間を

「上山コーチ、お手紙が届いてます。」

「え? あ、俺?」

「うん。」

「もしかして、翔真?」

「うん、そうだけど。」

「ありがとう。こいつから手紙来るの、いつも楽しみなんだよね。」

「ふ~ん。」


そう言いながら、彼が近付いて来る間にもドキドキが続いている。

何となくだけど、彼の方も視線を逸らしているように感じる。


「こいつさぁ、俺が事故から庇ってやった奴なんだ。」

「えっ? そうなの?」

「うん。たまに、こうやって、律儀に手紙くれるんだよね。」

「へぇ......。」


すぐそばまで来て、手紙を受け取りながら話す彼と目が合わせられない。

でも、私の気を引こうとしているのか、彼は構わずに話を続けた。


「俺さ、現役の時、超いい加減な選手だったんだけど、こいつ、何故か、俺のファンだったらしいんだ。近所に住んでて、いつもグランドに練習見に来てて、まったく無名の俺にサインくれとか言って来てさ。仲良くなって、ちょっと可愛がってた。」

「ふ~ん。」

「でさぁ.......。」

「.......うん。」


彼はベンチに腰を下ろすと、隣に座れと促すかのように、私の腕を引っ張った。

たいしたことじゃないのに、触れられてドキっとする。

そんなことをされたら、逃げる訳には行かない.......よね?


「こいつ、今でも、自分が俺の選手生命断っちゃったとか思って、気にしてるんだ。そんなの、全然いいのにな。」

「.......。」


そう言えば、その話って、詳しく聞いたことがなかったかも。

プロの選手になるって、すごく大変なことなのに、そんなに明るく割り切れちゃうものなのかな?