今しかない、この瞬間を

そんなのヤダよ。

突然、そう言われても納得できない。

朱美さんがいなくなっちゃったら、俺はこれからどうすればいいんだよ。

心を落ち着かせる場所は、ここしかなかったのに.......


「一学期が終わったら、引っ越そうと思ってる。光汰のお誕生日、一緒にお祝いできなくてごめんね。」

「.......。」

「でも、良かったね。光汰には、私がいなくてもちゃんと支えてくれる人がいるから、もう大丈夫でしょ?」

「.......え?」

「胸に手を当てて、よ~く考えてごらん。」

「.......。」

「彼女のおかげで、私も決心できたの。光汰はもう寂しくなんかないよね。」

「.......。」


それって、あいつのことを言ってるのか?

確かにあいつが入社して来てから、俺の毎日は変わったと思う。

だけど、あいつはそういうんじゃなくて、友達っていうか、妹っていうか、よくわかんないけど、一緒にいるとホッとするっていうか.......


「今までありがとう。光汰に出会えて良かった。」

「朱美さん.......。」

「光汰に会えなかったら、私、ボロボロだった。光汰が支えてくれたから、ここまで生きて来れた。」

「それは俺も同じだよ。」

「そう? そう言ってもらえて嬉しい。本当に、本当にありがとう。」

「俺こそ、ありがとう。」


悲しいけど、今の朱美さんの言葉が別れを決定付けた気がした。

もう何を言っても、結論は変わらないし、離れなくちゃいけないんだってわかった。


だから、この瞬間、理解しようと思った。

ショックが大き過ぎて、頭でわかってても、心は付いて行けてない状態だけど。