「うっす。」

「おはよう。」

「どう? 準備、順調?」

「うん。もう材料刻んだから、お皿並べたら終了。」

「さっすが。手際いいじゃん。」

「まぁね。」

「じゃあ、これは御褒美だな。はい。」

「あ、上山コーチもお酒買って来てくれたの?」

「うん。こういうの、お前、好きそうかなと思って。」


手渡された袋には、パイナップルがベースになった微炭酸のスパークリングワインのボトルが入っていた。

フルーツがたくさん描かれたパッケージからして可愛くて惹かれるし、何となく想像できるフルーティな感じにも心がときめく。

何より「お前が好きそうな」が、ものすごく嬉しい。


「ありがとう。嬉しい。早く飲みたい。」

「だろ? 」

「あっ、上がって。もうすぐ里菜ちゃんたちも来るだろうし。」

「うん。」


慣れた様子で部屋の中に入って来る彼を、当たり前のように招き入れる私。

「彼氏」でも何でもないのに、不思議な感覚だ。


それを喜ぶべきなんだろうけど、好きな人とずっとこんな関係でいるのは、やっぱりちょっと切ない。

だからと言って、自分から攻める勇気はまだ持てないし、普段、これだけ仲良くしているだけに、その方法にも悩んでしまう。


朱美さんにあんなことを言われたばかりだから、今日は尚更、そう思う。

なのに、部屋の奥まで進み、窓の前でパッと振り返った彼が、突然、ドキッとするようなセリフを口走った。


「ねぇ、あのさぁ。」

「なぁに?」

「前から思ってたんだけど、こういうの、そろそろ止めない?」

「えっ? なに、を.......?」