目覚まし時計が鳴る。

朝のモーニングコールだ。1階の水道で顔を洗い、ガシガシとタオルでふくと、食堂に行く。
今日は、スクランブルエッグとサラダ、それにミルクがメニューだった。ガツガツと勢いよくたいらげて、洗い場で食器を洗うと、「孤児院」と書かれた札が外にかかっているドアを片手で開け、

「いってきます!」

そう言って僕は外に飛び出した。

行き先はもちろん、友達のいるところだった。走り抜ける町の通り道は、シン……と静まりかえっていて、人も2、3人いるくらいだった。
それもそのはず、まだ朝の4時半だからだ。当然まだ通りに並んだパン屋さんや、洋服屋さんはシャッターが閉まっている状態であった。

僕はこの道を思いっきり走り抜けた。まだ涼しい時間帯なのに僕の体はストーブみたいに熱を発していた。
それでも僕の足は止まらない。あいつに会うのが楽しみで仕方ないからだ。今日はいったい何をしようか。

そう考えているうちに僕は噴水の広場まできていた。そこではほうきを持ってせっせと掃除をしている小さな少年がいた。

「おーいおーい!」

そう声をかけると、少年はクルリとこっちを向いて

「やぁ!おはよ~」

と言った。
「サハネは今日もはやいなー。君ほど熱心に掃除をやってるやつなんて、人間でもロボットにもいないよ」

「そう?でもキアラほど熱心に毎日僕のところにくるやつも、人間でもロボットにもいないよね」

そう言われ急に顔が熱くなった。

「なっ、そそんなことないよ。ただ早く目が覚めちゃうだけさ!」

「ふーん」

その一言でさらに僕の顔は赤くなり恥ずかしくなった。
サハネはとっても頭の回転がいいから、勉強なんてお手のものだし、さらに人の感情を読むのが上手い。だから困ってるときはすぐに助けてくれる。まぁ今のように逆にいじられることもたまーにある。ほんとにたまーにしかいじられないから。

「ところで今日何する?」

そうそう、一番重要なところだ。僕的には近くの川で水遊びとか探検ごっこをしたいなんて思ってる。一方サハネはなんて言うか、凄く気になる。

「んー。でもたまにはゆっくり話したいかも」

意外な答えがかえってきたが、サハネらしいと思った。サハネは結構まったりとした性格で、常に落ち着かないような僕とは真反対。でも何故か気が合い、なんとなく僕も話したい気分になった。

「オッケー。じゃあそこのベンチに座ってはなそーよ」

コクりとうなずくと、サハネは爽やかな笑顔を浮かべ、スッとベンチに座り青く広がった空を遠い目で見つめた。