「こうやって出会うことがなければ、変な感情に流されることもなかったんじゃない?いきなりいい人が現れたからって好きになりました?フッ、そんなの都合のいい錯覚に決まってんでしょ。どうせ、離れたら忘れる一時的な感情でしかないからね」



一時的な感情って、そんなの

そんなの先生にはわかんないじゃん…っ



ギュッと唇を噛みしめる。


どうして、櫻木先生はそんな寂しい考え方しか出来ないの?



しばらくすると、化学準備室から女子生徒が泣きながら走って出てきた。


一瞬、目が合って……


この前、櫻木先生に化学教えてもらってた子だ…


その子は手で顔を覆い走って行ってしまった。




このとき思った、櫻木先生に恋しても無駄だって。


間違っても好きになんてならなくてよかった。


どうせ、返答なんて決まってるんだから。




好きになっちゃいけないんだよ。


櫻木先生を好きになっても悲しいだけだよ…



あたしはこのときそっと、心のフタを閉めた。