「ほら、早く乗って。時間押してるから」


誰かの化粧と髪型の時間でな…!


後部座席のドアを開け早く乗るように促すが、高梨は足を動かそうとしない。


「あ、あの…….じょ、助手席じゃ…ダメですか?」



上目遣いで見つめてくる高梨は
やはり、いつものガキっぽい高梨には見えなくてほんの一瞬焦った。



「ダメだと言ったら、騒ぐんだろう。時間がない、早く乗れ」



後部座席のドアを閉め、助手席を開けると
高梨は溢れる笑みを抑えられないかのように喜びを見せた。



段々と高梨の策略に乗せられている気がしてならない。
俺が根負けしてやったのは遅刻するかもしれないから、ただそれだけだからな。



急いで車に乗り込み、エンジンをかけ出発した。



車内はカーナビの声と、たまに聞こえるエンジンの音だけでとてつもなく居心地が悪い。

無駄に喋る高梨もなぜか無言だ。
いつものマシンガントークはどうした。


気になりチラッと高梨を見ると、俺をずっと見つめていたのか慌てて視線を逸らした。



「き、今日の櫻木先生……いつもよりも増してカッコよくて…鼻血でそうです……」



………変態か。