「だからって、夢諦めてあのクソ親父の言いなりになってる俺も情けねぇよな。まあ、教師になるのだって簡単なことじゃなかったけど。今でもたまに思う、これでよかったのかって」
櫻木先生のこんな落ち込んだような感じの声、初めて聞いた。
俯いて、自嘲してるんじゃないだろうか。
静かにベッドから起き上がり、スライドドアから少しだけ覗いてみると案の定、櫻木先生は缶ビールを持ったまま俯いていた。
こんな先生、見たことない……
「涼子ちゃんと、約束したからか…?」
ギクッとした櫻木先生は真野先生の顔を見つめてから視線を外した。
「いや、別に。アイツはもう関係ねぇよ……ただ、自分が根性なしの情けねぇヤツで、こんな気持ちのまま生徒たちの前に立って教える資格なんてあんのかって…」
櫻木、先生……
『こんな面倒な職業、なりたくてなったわけないでしょ。生徒に歩み寄ろうなんてさらさら思わねぇし。』
なぜ、教師になったのかと聞いたとき櫻木先生はこう言った。
櫻木、歩み寄ろうなんて思ってないわけじゃないんだ。
本当は、色々気にしてるんだ……
そう思うと、あたしの胸はなぜかキューっと痛んだ。

