俺の言葉を聞いて、驚きの表情を浮かべる神谷。


そして、ニッと笑って俺に尋ねた。


「もしも、あの塔の頂上に何もなかったらどうする?この街の住人全員が元の世界に戻れる手段なんてなかったら……お前はどうする」


天井を指差して、神谷が食い入るように俺を見る。


何もなかったら……なるべく考えないようにしてたけど、今でも何かがあると思ってる。


そうじゃなきゃ、戦えなくなりそうだから。


「その時は……また、別の方法を考えます。やってみないとわからないし、行ってもいないのに可能性を諦めたくありません」


言葉を選んで話そうだなんて考えなかった。


ただ、純粋に自分の言葉を声に出して、神谷にどう思われようと関係ないとさえ思ったから。


その想いを連ねただけの言葉が……神谷をなぜか笑顔にする。


「いたいた、そういうやつ。この街に来て、すぐに強くなってよ。松田に『あの塔に登ってみよう』って提案したけど、あっさり却下されて、腐ったバカがよ」


笑いながらそう言って、話の途中で一発デカい屁をこいた。


その空気を読まない屁でさえも、神谷の男らしさを感じさせるな。


「面白いよお前。バカがまた夢を見たいと思っちまったじゃねえか。バベルの塔……俺もまた、行ってみたくなったぜ」


バンッと自分の膝を叩いて、神谷が満面の笑みでそう答えた。